日本英語教育史学会

 143回月例研究会(2000/10/15 英語教育史入門講座(1)

 

教科書分析法: ナショナル・リーダー研究の思いつくテーマ

 

道(玉川大学)

 

 

1.19世紀アメリカの国語教科書という観点から

 

・当時のアメリカの国語教育は、どんなものだったか (1884は『ハックルベリ・フィン』 刊行の年)

・当時のアメリカの教科書はどんなものだったか

・そのなかでこの教科書はどんな位置を占めていたか(序文にいう教育的配慮など)

・どんな地域で用いられたか

・この教科書の著者はどんな人か (同じBarnesでも1, 2巻と3巻以降では別人, 出版社も変わっている)

New のつかない版は存在したのか

・どのような教授法を前提としているか (3, 4巻の巻頭にSuggestions to Teachers)

 

 

2.日本にはいつ頃から輸入されて、どのくらい普及したか

(舶来本、翻刻本とその値段, 高梨, p.62)

 

・今どのくらい残っているか

・これを使って、教えた記録、学んだ記録にはどのようなものがあるか、どこに魅力を感じたのか、進度はどのくらい (松村、p.120-1) 

 

 

3.言語教材の観点からの分析

 

・発音と綴り、フォニックス、ペンマンシップ(スペンセリアンの衰退)についてはどのような配慮がなされているか、発音表記はWebster式だが

1ページに新語は7語としているが、その反復度はどうか

・各巻の語彙数, 累積語彙数はどのくらいか

・センテンスの平均語数はどれくらいか、リーダビリテイはどれくらいか

・現在の教科書の語彙リストと比較して、出てくる単語、出てこない単語

・文型・文法事項はどんな順序, 密度で出てくるか, 機能語の出し方

・時制、句と節、修飾関係など項目別に学年順 (巻数順?) に表にする (指導要領の学年指定と比較)

・現代の語法・文法から見ての相異点

・文体は1-3巻は会話体中心, 4, 5巻は叙述体

・練習問題などLanguage Lesson (2から) の種類と分量

・巻1にはword methodによるObject Exercise

・付録などの種類と分量 Phonic ChartDefinitions

 

 

4. 題材面からの分析

 

・語彙の分析、当時のアメリカ特有の語彙があるか、固有名刺は (4, 5巻の巻末に地名・人名リスト)

・どんな内容の物語が多いか、自然と人間、都市と農村、国内と海外などの割合、宗教色は濃厚か?

・どんな徳目を含んだものが多いか (1, 2巻巻末にPearls in Verse)

・明治の日本人の生活との落差、現代との違い

・どのような出典が多いか、19世紀アメリカ文学との関連 (巻5の巻頭に作者リスト)

・詩教材の分量はどうか (4, 5巻では散文の課と詩の課の目次が別)

・題材の形式 (説明文, 対話文, 物語, , 手紙, 日記) で分類してみるとどうか

・挿絵の量と質 (5の目次には画家と彫り師のリスト) (2outline drawings)

 

 

5.日本人による注釈書にはどんなものがあるか

 

・教師用 (『第四読本研究』『第五読本研究』ほか)

・生徒用 (独案内)

・学習者の書きこみのある本はないか

・誤訳, 誤解など日本人にとっての困難点

・国産英語教科書や小学国語教科書への影響、引用された課