日本英語教育史年表 | 日本英語教育史学会

日本英語教育史年表

明治

 

明治元年(1868

4月)福沢諭吉, 英学塾を「慶應義塾」と命名 (創立は安政5年〈1858l0, 慶応49月に明治と改元されました)

9月)新政府, 旧開成所を復興し開成所 (開成学校とも) とする

11月)英学塾 「三叉学舎」 (箕作秋坪) 創立

 

明治2年(1869

1月)開成所, 授業開始 (英語教師に英人パーリー (Parry) を雇用, 英米人お雇い教師の始まりです。 語学を正則, 講読を変則と定めました)

1月)『改正増補 和訳英辞書』(日本薩摩学生編。本書は薩摩学生数名が留学費用調達のため, また後進のために出版したものです。 底本は『改正増補 英和対訳袖珍辞書』(慶応3, 1867)です

5月)『ピ子ヲ氏原板 英文典』(慶應義塾刊, 同塾用読本。 T.S. Pinneo: Primary Grammar of the English Grammar for Beginners. の翻刻。 このように自校用英語教材を作った例は他にもみられます)

11月)英学塾 「攻玉塾」 (近藤真琴) 再開

 

明治3年(1870

9月)ミス・キダー (Mary E. Kidder), 英語塾を開く (のちのフェリス女学院)

10月)英学塾 「共立学社」 (尺振八) 創立

(閏10月) 「大学南校規則制定 (7条に, 外人教師について韻学会話より始めるのを正則, 日本人教官について読解解意を学ぶのを変則と定めています。大学南校は開成所の後身で, のちに開成学校, 東京大学となります)

11月)英学塾「育英舎」(西周) 創立

 

明治4年(1871

7月)文部省を設置

9月)『英文典便覧』(青木輔清編述, 忍県洋学校刊。 日本人が日本人のために書いた最初の英文法書です)

11月)最初の女子留学生 (津田梅子・山川捨松ら5) 米国に出発

 

明治5年(1872

8月)「学制」を発布(わか国最初の近代学校制度に関する教育法令です)

8月)「外国教師ニテ教授スル中学教則」を制定

(この年)森有札, 英語を日本の国語とすることを主張 (ホイットニー (W. D. Whitney) 教授宛の書簡。 しかし同教授は森の考えに不賛成でした)

 

明治6年(1873

1月)太陽暦を実施

2月)切支丹禁制の高札を撤廃 (キリスト教が解禁となりました)

2月)英学塾 「同人社」 (中村敬宇) 創立

5月)開成学校の専門学科の教授用語を英語と定める (この決定によって学校における英語の地位は名実ともに不動となりました)

6月)米人モルレー (D. Murray), 文都省学監として着任 (文教政策の最高顧間として近代教育発展の基礎を築きました)

 

明治7年(1874

12月)東京外国語学校の英語科を分離して東京英語学校を設置 (同時に愛知・大阪・広島・長崎・新潟・宮城の各外国語学校を各英語学校と改めました)

 

明治8年(1875

9月)『語学独案内』(ブリンクリー著, 印書局)

 

明治9年(1876

8月)札幌農学校開校 (教頭にクラーク (W.S. Clark) が招かれました)

 

明治10年(1877

4月)東京大学を創設, 併せて東京大学予備門を設置 (東京大学予備門は東京英語学校を改称した学校で, 東京大学に入るための予備教育機関です)

 

明治12年(1879

9月)「教育令」を公布, (「学制」を廃止。 1312月改正教育令)

 

明治14年(1881

7月)「中学校教則大綱」布達(外国語は週6時間)

 

明治16年(1883

4月)東京大学において英語による授業を廃止し, 日本語を用いることに決定 (しかしこの時点では実施は困難だったようです)

 

明治18年(1885

11月)『英文学生学術雑誌』(The Student, 神田乃武・W.D. Cox編集) 創刊

12月)森有札, 初代文部大臣となる

(この年)この年から21年にかけて原書リーダーの訳本・解説書が多数出版されており, 英語学習人口の増加を示しています

 

明治19年(1886

3月)「帝国大学令」, 4月「師範学校令」「小学校令」「中学校令」を公布

8月)『英語発音秘訣』(菊地武信著, フルベッキ校, 菊地氏蔵版。 わが国最初の音声学書です)

 

明治20年(1887

9月)帝国大学に英文学料を増設

9月)『外国語研究法』(マーセル著・吉田直太郎訳。 わが国最初の英語学習法解説書です)

 

明治21年(1888

2月)「国民英学会」創立 (イーストレーキ (W. Eastlake)・磯辺弥一郎。 明治から大正にかけてもっとも有名であった私立英語学校です)

 

明治22年(1889

11月)『正則文部省英語読本』(5巻。 外山正一編纂, 文部省。 序文において, 変則英語を批判し, 正則英語を主張しています。

英語教育史上貴重な文献です)

 

明治23年(1890

10月)「教育勅語」を発布 (2次世界大戦の終りまでわが国の教育理念を規制しました)

 

明治24年(1891

11月)『英国文学史』(渋江保, 博文館。 日本人の書いた最初のイギリス文学史です)

(この年)『外国語研究要論』(磯辺弥一郎)

 

明治25年(1892

4月)『日本英学新誌』創刊 (増田藤之助編集, 日本英学新誌発行所)

 

明治26年(1893

(この年)『外国語教授法改良説』(崎山元吉)

 

明治27年(1894

8月)日清戦争(28)

9月)『英語教授新論』(岡倉由三郎, 私家版)

11月)『中外英字新聞研究録』創刊 (磯辺弥一郎主筆。のち『中外英字新聞』などと改称)

 

明治29年(1896

10月)「正則英語学校」 (齋藤秀三郎) 創立 (文字運り正則英語の教育を行ない, 多くの人材を養成しました)

 

明治30年(1897

3月)The Japan Times (頭本元貞主幹。 日本人経営の英字新聞)

8月)「英語世界」 創刊 (外国語学校学年編集, 東京英語世界社)

9月)『英語教授法』(外山正一, 大日本図書。 本書は『正則文部省英語読本』の使用法を示した書でもあるのですが, 4技能の総合的教授を主張した画期的な名著といわれ, 『英語教育』(岡倉由三郎, 44)とともに明治時代の英語二大文献といわれています)

(この年)ワットキン (R.G. Watkin), マッケロー (R.B. McKerrow), それぞれ高等師範学校, 外国語学校 (のち東京外国語学校) で発音記号を用いて英語発音学を教授 (発音記号を教えた最初です)

 

明治31年(1898

4月)高等師範学校文科にはじめて英語部を設置

4月)『青年』(The Rising Generation. 武信由太郎, 勝俣銓吉郎編集。 現在の『英語青年』)創刊

10月)『実用英文典』(4巻。齋藤秀三郎, 興文社。 翌年完結。 以後の英語研究に大きな影響を与えました)

 

明治32年(1899

5月)『外国語之研究』(内村鑑三, 東京独立雑誌社。 変則英語を批判し, 正則英語を主張しています)

 

明治34年(1901

4月)『外国語教授法』(H. Sweet: The Practical Study of Languages. を八杉貞利が訳述。宝水館)

 

明治35年(1902

2月)『英語発音学』(片山寛・マッケロー, 上田屋, ウェブスター式から万国発音記号に切り替えた最初の本です)

7月)帝国教育会, 「英語教授法調査部」を設置

7月)スワン (H. Swan), 文部省夏期講習会で英語教授法を実演・講義しグアン・メソッドの普及につとめる

(この年)日英同盟成立

 

明治36年(1903

5月)『最新英語教習法 一名外国語新記憶法』(高橋五郎, 博文館)

 

明治37年(1904

1月)『英語少年世界』創刊(吉田幾次郎編集主任, 有楽社。 のち『英学界』(The Youth's Companion for the Study of English) と改題)

2月)日露戦争 (38)

 

明治38年(1905

6月)『英文解釈法』(南日恒太郎。 同著者には本書の他に『和文英訳法』(明治40),『英文和訳法』(大正3) があり, いずれも多数の受験生に親しまれ, 爆発的な売行きを示しました。 ともに有朋堂)

 

明治39年(1906

2月)『外国語最新教授法』」 (M. ブレンナー著・岡倉由三郎訳, 大日本図書)

7月)『英語発音学大綱』(岡倉由三郎, 三省堂)

12月)『英語教授』(The English Teacher's Magazine) 創刊 (P.A. スミス編集主任, 教文館。日本最初の英語教育の専門雑誌です。 外国人教師の機関雑誌ともいわれました)

 

明治40年(1907

4月)『英語世界』(The English World) 創刊 (長井氏?主筆, 博文館。 各界人士の英語研究談を数年間にわたり連載しており, 当時の人々の英語学習の方法かよく分かります)

(この年)カナダ・アメリカで排日暴動起こる (暴動は断続的に数年間続きますが, こうしたことがわが国の英語教育に暗い影を落とし始めます。 大正9, 13年を参照)

 

明治41年(1908

1月)『英語之日本』(佐川春水主筆, 建文館), 『初等英語研究』(吉田幾次郎主筆, 英語研究社。 のち『英語研究』と改題) 創刊

4月)義務教育年限6 (この年より実施されました)

(この年)『小学校用 文部省英語読本』(1 高等小学校用。 本書の教師用指導書には, 初めは耳から, 次いで口の練習に入り, それから目 (講読), 最後に手で書くという順序で教えよ,と書かれています)

 

明治42年(1909

1月)文部省「中等学校に於ける英語教授法調査報告」(『官報』(120) 委員長新渡戸稲造。 当時の英語教育の状況および識者の英語教青に対する考えを知ることができます)

 

明治43年(1910

7月)『英語研究 発音の原理』(岸本能武太, 北文館。 本書は, 今日は変則英語の時代ではなく正則英語時代であり, 英語を訳読訳解する時代ではなく直読直訳時代であるという認識のもとに, 発音の大切さを説き, 実践的な発音教授法を述べています)

 

明治44年(1911

10月)『英語教育』(岡倉由三郎, 博文館。 昭和12年増補再版。 岡倉の英語教育論を集大成したもので古典的名著です。 本書で論じられた英語教育の目的をはじめとする多くのテーマは現在でも間題となっており, 一読する価値のある文献です)

 


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