日本英語教育史年表
大正
大正元年( 1912)
( 9月)『公式応用英文解釈研究』 (山崎貞 , 英語研究社
。 俗に「英文解釈研究」と称されました 。版を重ね第 2次世界大戦後まで広く用いられ , 学習参考書として多大の貢献をしました )
( 9月)『英文法研究』 (市河三喜 , 英語研究社 。 本書の出版は , 日本の英文法研究・英語学研究が新しい時代に入る象徴的な意味を持っている , と評されています )
( 10月)『ナショナル第四読本研究』 (上巻 , 熊本謙二郎
・喜安璡太郎編 , 英語青年社 。 本書は ,明治初期から大正時代にかけて英語教科書として広く用いられた米国教科書 (C.J. Barnes編 New National Readers.) のうち最もよく使用された Fourth Readerの総合的な解説書です 。 当時の一流英語学者が執筆しており , 英語学習 ・研究に多大な影響を与えました 。 中巻 , 下巻は大正 4, 14年刊 , 英語青年社 )
大正 2年( 1913)
( 4月)第1回英語教員大会 (英語教育の改善をめざして,
内外人英語教師約 400人が集まりました。 翌 3年には約 500人が参加して , 「英語に対し中学生をして尚一層の興味を感ぜしむる方法 」 を答申しました )
(この年)大日本英習字研究会創立 (英習字の通信教育を行いました 。 大正 7年 , 機関誌『英習字研究』創刊
)
大正 4年( 1915)
( 7月)『熟語本位 英和中辞典』 (斎藤秀三郎, 日英社。 発売以来20年間で80万部を刊行しており, その影響の大きさを知ることができます。 改訂増補版(豊田実編 , 岩渡書店)は現在も市販されています )
大正 5年( 1916)
( 6月)『英文藻塩草』 , 7月『英詩藻塩草』 (南日恒太郎 , 北星堂 。 受験英語に明け暮れて英文や英詩を味わうことを忘れた学生に与えた書 。 受験界を風靡した著者の著したもので , 当時の英語教育者の心が窺えます )
大正 7年( 1918)
( 9月)『武信和英大辞典』 (武信由太郎 , 研究社 。 本辞典の後身が現在市販されている『研究社新和英大辞典』です )
( 10月)『受験と学生』創刊 (研究社 。 戦前の代表的受験雑誌で , 当時の英語の受験競争の実態が窺えます )
大正 9年( 1920)
( 4月)『初等英語』創刊 (吉田幾次郎主幹 , 研究社 。 のち『 2年の英語』と改題 )
( 7月) 「日進英語学校
」 (佐川春水 ) 創立
大正 10年( 1921)
( 9月)『最新研究 ・英文の解釈
・考へ方と訳し方』 (小野圭次郎 , 山梅堂 。 俗に小野圭の 「英文の解釈
」の愛称で受験生にしたしまれ , 150万部を突破したといわれています )
『研究社 英文学叢書』
(岡倉由三郎・市河三喜主幹 ) 発刊 (日本の英文学者を総動員して英文学の古典を解説し注釈を施したものです 。 全 100巻・総索引 1巻で , 昭和 7年完結 )
(この年) The Oral Method of
Teaching Languages (H.E.Palmer. Heffer)
大正 11年( 1922)
( 2月)『新自修英文典』 (山崎貞 , 研究社 。 大正から昭和にかけてのベストセラーで多くの英語学習者の座右の書となりました 。 現在も毛利可信増訂版で市販されています )
( 3月)パーマー (H.E.Palmer),
文部省英語教授顧問として来日
( 8月)『袖珍コンサイス英和辞典』 (神田乃武・金沢久編 。 ながい間学生生徒に愛用された三省堂コンサイス英和の始まりです )
大正 12年( 1923)
( 2月)『英語発音辞典』 (市河三喜 , 研究社 。 An English Pronouncing Dictionary for Japanese Students.
わが国で唯一の英語発音辞典です )
( 5月)英語教授研究所設立 (所長パーマー
。 機関誌 The Bulletin。パーマーはここを拠点にして , わが国の英語教育の改善に活躍しました )
( 6月) The Bulletin 創刊 (英語教授研究所機関誌 )
( 9月)★関東大震災
大正 13年( 1924)
( 1月) The Current of the World 創刊 (今井信之編集 , 英語通信社 )
( 5月)★米国 , 新移民法制定 (7月 1日施行 。 日本からの移民を禁止する条項が含まれていたので 「排日移民法 」 の名で呼ばれました 。 法案決定に至るまでの米国の動きに対して, わが国でも (英語教育に限定しても ) 英語存廃論などの世論が起こりましたが , 法案決定のニュースが伝えられると , 「米国語を追払え 」 (福永恭助 ), 「英語追放論
」 (杉村楚人冠 ),「看板の英語と中学の英語 」 (戸川秋骨 ), 「何を恐るゝか日本 」 (渋川玄耳 ), 「中等諸学校の英語排斥 」 (北ヤ吉 )などの報復論的な英語廃止論が新聞や雑誌に展開されました )
( 10月)英語教授研究所開催 「第 1回全国英語教授研究大会 」 開催 (以後毎年開かれ , わが国の英語教育の改善に大きな役割を果たしました )
(この年) Thinking in English (英問英答について実践的に論じています 。 翌年これをさらに発展させた English Through
Actionsを著しています )。 Memorandum on the Problem of English Teaching
in the Light of a New Theory (口頭教授法の原理を論じています )。いずれもパーマー著
, 開拓社刊
大正 14年( 1925)
( 1月)『英語研究苦心談』 (第一外国語学校編 , 文化生活社 。 当時の英語教育界の大家らの苦心談・学習方法が述べてあり , 極めて示唆に富む文献です )
( 3月)★「治安維持法」公布 ★「陸軍現役将校配属令」公布 (中等学校以上での現役将校による学校教練を支施 ) ★ 「普通選挙法
」公布
( 7月) JOAK, 夏期講座
「英語講座 」開始 (わが国でラジオ放送が始まって
4か月目のことです )
大正15年(1926)
(1月)JOAK,「早春ラヂオ英語講座」を開始
(4月)JOAK,「初等英語講座」(担当岡倉由二郎)を開始
(4月)『初級英語』創刊 (吉田幾次郎編集, 研究社)
(10月)音声学会創立 (会長新村出)
(11月)『受験の英語』創刊 (塩谷栄主幹, 大成社)
(12月)『英語新教授法の実際』(南石福二郎, 開拓社)